私の家に甲斐と帰宅
私の家に甲斐と帰宅した頃には、既に空も暗くなり綺麗な満月が暗闇の中に浮かんでいた。
「甲斐、適当に座ってて。best us stock trading platform今コーヒー淹れるから……」
リビングに入りバッグをテーブルの上に置き、キッチンの方に向かおうとした私を背後から甲斐が抱きしめた。
「コーヒーは後にしよ。……今は、早く七瀬が欲しい」
甲斐の唇が、耳をくすぐる。
ただ触れるだけでこんなにも感じてしまうのは、相手が甲斐だからだ。
「……私も、甲斐が欲しい」
「頼むから、あんまり煽らないで。理性なんて簡単に飛ぶから」
夕焼けを見ながら交わした、触れるだけのキスとは違う。
互いの奥深くに入り込んでいくような、舌を絡めた濃厚なキスを交わす。
甲斐の手が、私の胸の膨らみに伸びていく。
聞こえるものは、甘い吐息とキスの音だけ……ではなかった。
「キャンッ!」
「……」
「キャンキャンッ!」
それまで空気を読んで静かにしてくれていたのだろうか。
そこには、お座りをしながら上目遣いで私と甲斐を見上げるもずくがいた。
当然私たちはそのまま情事を続けることは出来ず、二人で目を見合わせて笑ってしまった。「もずく、ごめんね!もずくのこと、忘れてたわけじゃないんだよ」
「そういえば、もずくに飯あげた?」
「あ!忘れてた!」
慌ててもずくのご飯を用意しながら甲斐を見ると、もずくを抱き上げ満面の笑みを浮かべている。
もずくも以前から甲斐に懐いていて、興奮しながら甲斐の頬をペロペロと舐めている。
そんな光景を眺めていると、自然と胸がほっこりする。
本当は今夜、甲斐に抱かれることを願っていたけれど、きっともずくが鳴くだろうから無理そうだ。
でも、こんな穏やかな時間が流れるのなら、抱かれなくても別にいいかもしれない。
「やっぱりコーヒー淹れちゃうね」
「あぁ、ありがと」
コーヒーを淹れた後は、膝の上で眠るもずくを撫でながら、私たちは隣同士にソファーに座りテレビを見ていた。
テレビで流れているのは、甲斐が毎週録画しているほど好きなバラエティー番組だ。
テレビを見ながら楽しそうに笑う甲斐の隣で、私は一人そわそわしていた。
甲斐が私の部屋にいることに対して、今更緊張しているわけではない。
甲斐が私の恋人になったという現実がいまだにどこか信じられないのだ。「ん?どうした?」
「何でもない」
甲斐は完全にリラックスしている状態で、緊張している様子なんて微塵も感じられない。
「私、先にお風呂入るね」
「ん、わかった」
どこかそわそわしている自分が恥ずかしくて、私はお風呂場に逃げ込んだ。
今日一日でかいた汗をシャワーのお湯で洗い流し、上から下まで丁寧に洗っていく。
今日はもう、セックスするような雰囲気になることはないだろうと思いながらも、同じベッドで眠るのだからいい香りはさせておきたいとお気に入りのボディーミルクをたっぷり使い全身を保湿した。
お風呂から出ると、甲斐はまだテレビを見ていた。
甲斐の膝の上は、もずくがまるで自分の場所のように占領している。
少しもずくにヤキモチを妬きそうになりながらも、私は甲斐に声をかけた。
「甲斐もお風呂入ったら?バスタオルとか適当に用意しておいたよ」
「うん、ありがと」
立ち上がった甲斐は、私の頬に軽くキスをしてお風呂場の方へと向かって行った。
「……」
それまで普通にテレビを見ていたくせに、こんな自然にキスをしてくるなんて狡い。
不意打ちのキスに驚いて何のリアクションも出来なかった私は、頬に手をやり顔を赤くしたまましばらくその場を動けなかった。どうにか高鳴る胸を抑え、冷静さを取り戻したところで甲斐がお風呂から出てきた。
後はもう、もずくも一緒にベッドで眠るだけだ。
「じゃあ、もう夜も遅いし寝よっか。もずくもおいで」
そう言ってもずくを抱き上げようとした私の動きは、甲斐の手によって止められた。
「悪いけど、今日はもずくはダメ」
「え?」
「もずく、ごめんな。今夜だけは、俺に七瀬を独り占めさせて」
しゃがみこみ、もずくを撫でながらそう言った甲斐は、すぐに私の手を引いて寝室へと向かった。
「ちょ、甲斐……」
「七瀬が欲しいって、俺言ったじゃん」
甲斐の瞳には、先ほどまで感じられなかった熱が帯びていた。
甘く、愛しい人を見つめるような眼差し。
この視線に、私は弱いのだと知った。
寝室の扉が甲斐の手によって閉められ、二人の身体はベッドへとなだれ込む。
熱く濃厚なキスから始まり、甲斐の手が私のシャツをめくりあげる。
胸の膨らみに触れられ、指で弄られると、声を我慢出来ずにはいられなかった。
「あ……っ」
「七瀬、可愛い……」
「や、もう、変なこと言わないでっ……」
「変なことじゃないだろ。……いつも思ってるんだから」
前に一度だけ甲斐に抱かれたあの日よりも、今日の方が何倍も感じてしまっている自分がいる。互いの気持ちが一つになったからだろうか。
愛されているのだと知っててするセックスと、ただ身体だけを求めるセックスは何もかもが違う。
荒い息遣いも、重ねる手の温もりも、触れられたときの気持ち良さも。
「ねぇ、そんなに見ないで……」
甲斐の熱い視線が、全身に注がれている。
興奮すると同時に、顔を背けたくなるほどの恥ずかしさも感じてしまうのだ。
私は決して自分のスタイルに自信があるわけではない。
胸だってもっと大きければ良かったと思うことも多々あるし、お腹だって出来ることならもう少しへこませたい。
それなのに甲斐は、最上級の誉め言葉をくれるのだ。
「ごめん、綺麗だからずっと見ていたい」
「え……」
「俺、こんなに夢中になった人は七瀬が初めてなんだよ。だから……しつこくしても、許して」
うっとりするような表情でそんなことを言われてしまったら、私もそれ以上反抗することなんて出来るはずがなかった。
甲斐の愛撫は止まることなく、私の身体を指と舌を器用に使って絶頂へと誘っていく。
「やぁ……っ、あ……」
気付けばもう、目の前にいる甲斐のことしか考えられなくなっていた。