今まで、こんなに

今まで、こんなにもセックスが気持ちのいいものだと感じたことはなかった。

 

 

こんなにも気持ちが昂り、執拗に攻められることが嬉しいだなんて、感じたことはなかった。

 

 

「甲斐……好き……」

 

 

甲斐の首に腕を回すと、moomoo singapore 甲斐は余裕のない表情で私の身体の奥深くに入っていく。

 

 

「七瀬の中、凄い……締めつけられてく」

 

 

「だって……気持ちよくて……っ」

 

 

「俺も最高に気持ちいい」

 

 

甲斐が激しく腰を振り始め、私は押し寄せる快感の波に飲まれながら、彼の愛を全力で受け止めた。

 

 

もう、自分がどれだけ乱れてしまっているのかもわからないくらい、ただ目の前の甲斐に夢中になった。

 

 

愛してる。

本当はそう言いたかったけれど、少し重すぎるかもしれないと思い、その分何度も好きだと伝えた。

 

 

普段の私なら、好きなんて簡単に言えない。

でも、甲斐に抱かれているときだけは、自分の気持ちを素直に伝えられたのだ。翌朝、カーテンの隙間から射し込む朝の光を浴びて目が覚めた。

 

 

まどろむ目をこすり起き上がろうとすると、背中に暖かな重みがあることに気が付く。

 

 

「……」

 

 

甲斐は私の腰をがっちりと腕でホールドし、離さない。

でも、明らかに寝息を立てて眠っている。

 

 

甲斐の緩くパーマがかかった髪に触れながら、昨日の熱く乱れた夜を思い出す。

いつ眠ってしまったのかも覚えていないくらい、甲斐とのセックスに夢中になっていた。

 

 

もちろんお互い、今も全裸のままだ。

甲斐の無垢な寝顔を眺めているだけで、心が幸福感で満ちていく。

もしかしたら女の私よりも、寝顔は可愛いかもしれない。

 

 

もう少しこの寝顔を堪能したいと思いながら、ベッドの隣にあるサイドボードに置かれたスマホを見ると、時刻は既に朝七時を過ぎていた。

 

 

「嘘、やばっ!」

 

 

私が勢いよく飛び跳ねたせいで、それまで気持ち良さそうに眠っていた甲斐も目を覚ました。

 

 

「何だよ……どうした?」

 

 

「甲斐、急いで起きて仕事行く支度しないと!もう七時過ぎてる!」

 

 

「うそ、マジで?」

 

 

本当なら甘い朝を迎えたかったけれど、もうそれどころではない。「もう……ちゃんとアラームかけておけば良かった!」

 

 

「昨日はお互いそれどころじゃなかったもんな」

 

 

「……そうだね」

 

 

仕事があることはちゃんとわかっていたけれど、昨夜はアラームをかけて眠るなんて考える余裕はなかったのだ。

 

 

もう少し早く起きていれば、もしかしたら朝から甲斐とじゃれ合う時間が作れたかもしれないのに……そんなことを思いながら床に散らばっている服を拾い上げていると、甲斐の眠そうな声が聞こえた。

 

 

「でも、残念だな。もう少し早く起きてたら、朝から七瀬とイチャイチャ出来たのに」

 

 

「な……」

 

 

この男は、私の心の中を読めるのだろうか。

私が思っていたことと同じようなことを甲斐が口走ったせいで、私は面白いくらいに動揺してしまった。

 

 

「七瀬も、同じこと思ってた?」

 

 

「お、思ってない!」

 

 

「ふーん、思ってないんだ」

 

 

私より先に服を着た甲斐が、私の目の前を通り過ぎて寝室から出ようとしたところで、私は甲斐の手を掴んだ。

 

 

「……ごめん、嘘。本当は、甲斐と同じこと思ってた」

 

 

「お前さぁ……無意識だと思うけど、それ完全に煽ってるから」

 

 

「え?」

 

 

気付けば私は、ベッドに押し倒されていた。「ちょっ……甲斐!」

 

 

「お前が煽るから、スイッチ入った」

 

 

そう言って甲斐は、昨夜のように私に熱い視線を送りながら、私の首筋に舌を這わせた。

 

 

このまま、受け入れてしまいたい。

何もかも忘れて、この甘い時間に酔いしれていたい。

本気でそう思ったけれど、やっぱり社会人としてそこは理性が働いた。

 

 

「もう……イチャイチャしてる時間ないんだってば!調子に乗らない!」

 

 

「じゃあ、キスだけ」

 

 

「もう……」

 

 

起き上がろうとした私に、甲斐は優しいキスをくれた。

キスしている時間さえないくらい、急いで支度しないといけないはずなのに、私は観念してそのまま甘いキスを受け入れた。

 

 

甲斐とキスをしていると、時間を忘れてしまいそうになる。

キスをたっぷり堪能した後、甲斐は出勤前に自分の家に帰って行った。

 

 

私は甲斐が出て行ってから猛スピードでシャワーと化粧を済ませ、朝食は飲むヨーグルトだけを一気飲みして家を出た。

 

 

どうにかキスだけで終わることは出来たけれど、結局職場に到着したのは朝礼が始まる一分前だった。

 

 

「セーフ……」

 

 

「ギリセーフだけど、ほぼアウトに近いセーフね。どうしたの?二日酔い?」

 

 

同僚の看護師から二日酔いで遅刻しそうになったのかと問われたため、私は無理やり話を合わせることにした。

まさか朝からキスに夢中になっていたなんて、言えるわけがない。「実は、そうなんですよ。昨日、飲み過ぎちゃって……」

 

 

「でも、肌のツヤ随分いいわね。二日酔いならもっとむくんでるはずだけど」

 

 

女性は同性に厳しい。

そして男性よりも断然細かいところに目がいくものだ。

それは女性スタッフばかりのこの眼科に配属されてから、身を持って知ったことでもある。

 

 

甲斐と付き合い始めたなんて知られたら、あっという間に院内に噂が広まってしまうだろう。

いつかは知られてしまうことだろうけれど、自分からは敢えて言わないことにした。

追及される前に、逃げるが勝ちだ。

 

 

「何か怪しいわね。本当に二日酔い?」

 

 

「だからそうだって言ってるじゃないですか。あ、朝礼の時間ですね!」

 

 

素直に打ち明けても良かったのだけれど、今までも散々甲斐との仲を疑われてきて、その度に甲斐は親友だと答えてきたため今さら付き合い始めたとは言いにくいのだ。

 

 

朝礼が終わり始業時間になると、患者さんが続々と押し寄せ待合の椅子はほぼ満席状態になる。

 

 

今日からまた、いつもと同じような日々が始まる。

でも、私の心は昨日までとは全くと言っていいほど違う。

 

 

心身共に満たされた朝を迎えるなんて、いつ以来のことだろう。